2008.02.21 更新
2月19日、高画質のハイビジョン映像を長時間録画できるよう、記憶容量を大幅に高めた高性能の光ディスク新世代DVD(デジタル・ビデオ・ディスク)対応機の規格争いに決着がついた。東芝が3月末で「HD DVD」方式の生産、販売から撤退することを発表したためで、これによりソニーや松下電器産業が推進している「BD(ブルーレイ・ディスク)」方式が、事実上、世界標準の統一規格になった。これまでは、互換性のない両規格が併存していたために、対立陣営に属すソフト(映像)が見られなかった。
BD方式は、記憶層がディスクの表面に近く、データを高密度、高精度で記録でき、記憶容量が大きい(50ギガバイト)。これに対し、HD方式は、既存のDVDの製造ラインを転用でき、低価格化が可能というメリットがあった。記憶容量は30メガバイト。
新世代DVDの規格争いで思い出されるのは、1970~80年代の「VHS」対「ベータ」のビデオ戦争だ。このときはソニーが初めにベータ方式を商品化したが市場で縮小、ビクターが開発した後発のVHSへ転換するまで14年を要した。今回は、前回に敗者に回ったソニーのBD方式が規格提唱から5年、商品化からわずか2年で勝利したことになる。ちなみに、昨年10~12月の国内での新世代DVDレコーダーの販売台数は、ソニーが59.6%を占めたのをはじめ、BD方式の対応機がシェアする90%超で圧倒、HD方式の東芝は、3.8%にすぎなかった。
BD方式が世界規格として統一されるのは、米国の大手映画会社でDVDソフト最大手でもあるワーナー・ブラザースが、1月上旬にBD支持を表明したのが決め手となった。さらに20世紀フオックス、ウォルト・ディズニー、ライオンズゲートや小売り最大手のウォルマート・ストアーズ(2月15日に支持発表)が相次いで陣営に参加して、大勢が決した。HD方式の東芝はハード(機器)の特許料収入にこだわり、ワーナーを離反させ、日立製作所やシャープもBD側に移らせてしまうなど、陣営づくりに失敗したのが響いた。
複数の規格が対立した場合、製品化に先立って日本工業規格(JIS)のように国で統一したり、国際電気通信連合(ITU)などの国際機関で話し合うのが通例だ。今回のように市場競争に委ねたのは、技術開発のテンポが早く、客観的な優劣は消費者の選択に任せたほうが賢明だということがあった。しかし、決着がついたことで、今後はHD方式のユーザーが不利になる恐れがあり、東芝は生産販売中止後も、録画用DVDディスクの補充品を8年間保管するなどの顧客対策を行う方針だ。なお、これまでにHD方式の対応機は、世界でプレーヤーが約100万台、レコーダーが約2万台販売されている。
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